プライア

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バリオスは、チェーン展開する、 イタリアンカフェ&レストランの パーキングに駆けこんだ。 肝臓に棲みついたウィルスのせい で、猫食いせざるを得ない体質に なって疲れ易いし、射ち続け飲み 続けている薬のせいで時々イラつ くが、甘い物を 口にすると気が休 まって少し落ち着く。 十真は、セルフで席に運んだカプ チーノにスティックシュガー3本 を入れた。 街に灯りが点(とも)り始めた。 十真の携帯が、着信音を鳴らし… だが電源を切られた。 「親父…」 「呼び出しか?」 「今夜は親父の顔なんか 見たくない。…健、俺ってさ、 君の何?」 「おい。ファミレスで そんな…」 それでなくても斜め向かいの地元 マダムが好奇の目を向けている。 健は肘をテーブルに付き、親指を こめかみにあてて、両手を額に 翳(かざ)した。 だが、ど真ん中に来た球は場外に 打ってやる。 「相棒」 「相棒ね…」 「不服か?」 「いや…」 お互い年下の恋人は別にいる。 だったら確かに五分五分(フィフテ ィフィフティ)じゃないか。 と十真は思った。 「健、今夜泊めて」 「狭くて、こ汚ない俺の 部屋に?名族、鬼(きさらぎ)家 の御曹司を?」 「じゃ、ホテル」 「だめ。おまえ、エグゼクティブ ルームだの、ロイヤルスイート だの、すぐ無駄遣いすっから」
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