プライア

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街で有名(フェイマス)な起業家の 令息に、こうまで好かれるとは思 わなかったし、そのライバル強豪 企業家の孫に、恋をするとも思わ なかった。 それで俺は、周りから「野心家」 に見られている。 ありがた迷惑な話だ。 といって「幸運体質」ってもんで もない。 22歳の俺の人生は、この先どう なる… 手厚くもてなされれば、スリット に入るのも可能な身体能力は持っ ている。 いつかはディフェンスに回らねば ならないのだろうか? だが、今はまだ… 会計時に、差し出された釣り銭を 受け取る十真が、年若いイケテン (イケメン店員 )の手を握った。 健は小さく舌打ちした。 「バカ! こっちが恥ずかしい だろ! もうこの店に来らん ねって」 「フィッシング ギア(釣り銭)で ギア アップ(期待) をね」 「陸(おか) 釣りってか? くっだんね!」 言い捨てて、健はタメ息をつき、 このイースティ(酵母の・不安定) な情況を呑み込むために、二三度 頷(うなず)いてみせた。 「分かった十真。じゃ、風呂 入ってこうか? 途中にスパ (鉱泉・湯どころ) あるから…」
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