十二、仙界

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「膝をついて座れ、狐雲様の御前じゃ」 「は、はい!」 「チッ……」  鷹海に指示され、いろりは柔らかな緑の苔が生えた地面に正座する。  蛇珀は不満気な顔で胡座をかき、鷹海は片膝をつき跪く形で頭を下げた。 「東城いろり、蛇珀が世話になっておるな」 「あ、い、いいえ、そんな、お世話だなんて滅相もございません!」 「隠し立てせずとも神眼や水鏡(みずかがみ)で知っておるぞ。そなたたちの様子はすべて……な」 「え……?」  すべて知っていると言われたいろりは、蛇珀との仲睦まじい様子も見られていたのかと思い当たり、顔を赤くしたり青くしたりを繰り返し焦った。  そんないろりの反応を楽しむように、狐雲は狐らしく目を細め笑った。 「あっ、え、えぇと、あの」 「狐雲! いろりで遊ぶんじゃねえ!!」 「これはすまぬ。反応が愛らしゅうて、ついな。……さて、蛇珀」  狐雲の細く切長の目が蛇珀を捕まえる。 「確かに人間界に滞在する許可は出したが……丸一月音沙汰なしとは、いただけぬな」 「うっ……、ま、まあまあそう言うなよ。ほら、土産持って来てやったからさ!」  そう言って立ち上がった蛇珀が懐から出したのは、いなり寿司であった。
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