十二、仙界

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 仙界に入る前、蛇珀がしまい込んだのは狐の像の前に供えられたこれだった。  いなり寿司は狐雲の大好物のため、問題児……ならぬ問題神である蛇珀は多少機嫌を取りたい時に利用しているのだ。  しかし、その蛇珀のまるで童に餌付けするかのような振る舞いに、再び鷹海の罵声が上がった。 「蛇珀! 貴様は狐雲様をなんだと思っとるんじゃこのうつけ者!!」 「……」 「狐雲様も無言でいなりを受け取らないでいただきたい!」  そっといなり寿司を懐に忍ばせる狐雲に注意をする鷹海。 「まったく、狐雲様はいささか蛇珀を甘やかしすぎですぞ!」 「うるせえな、鳥頭」 「だぁぁれが鳥頭じゃこの蛇頭! 貴様は自分の状況をわかっとらんようじゃな!!」 「なんだとコラ!?」 「あ、あの、お二人とも、少し落ち着かれては」  二人はいろりが止めるのも聞かず、さらに怒声を浴びせ合う。 「人間の娘に心を乱されて地震を起こす未熟者が!!」 「な!? ……う、うるせえうるせえ! お前に関係ねえだろ!!」 「関係あるから連れて来たんじゃろうが! わしら三角頂(さんかくちょう)の心の乱れはこの国を滅ぼしかねんのじゃぞ!!」 (——国を滅ぼす……? どういうこと……?)
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