十三、神の責務

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「いろり、そなたも蛇珀の想いに相違ないな?」 「は、はいっ! わ、私のような普通の人間が……おこがましすぎるとは思いますが……蛇珀様と、ずっと一緒に、いたいです」  控えめながらも明確に、凛と狐雲を見据えて想いを示すいろりに、蛇珀は胸の内が熱くなるのを感じた。 「そなたたちの気持ちはわかった。なればこの世——仙界の理を教えよう。まずは申し遅れたが、私は空を司る狐神の狐雲。(よわい)は千を数える」 「せ、千ッ……!?」  想像以上の桁にいろりが驚きの声を漏らした。 「そこにおるのが海を司る鷹神(たかがみ)の鷹海。齢は六百になったか」 「はい、狐雲様。あなた様のお手を煩わせることはありません。ここからはわしが説明いたしましょう」 「よい。任せる」  鷹海は狐雲に心酔しており、必要がなくとも側にいる。そうしていつの間にか付き人のようになっていた。 「空、海、地を司るわしら三人の神を三角頂と呼ぶ。他にも恋神(こいがみ)学神(まなびがみ)戦神(いくさがみ)など様々な神がおるが、三角頂はこの世の土台となる最も重要な神であり、わしらが穏やかであれば国も平和であると言われておる」  それを聞いたいろりはほう、と息をつきながら尊敬の眼差しを蛇珀に向けた。 「蛇珀様は神様の中でもすごい方だったんですね……!」 「お、おう! まあなー、はは!」 「その分責も重いということじゃ。わしらの心が乱れれば国も荒れる。蛇珀が地を揺らしたことで、必要以上の命が消え失せる可能性があったということじゃぞ。貴様もそれがわからぬほど愚かではあるまい」  いろりは衝撃を受けた。
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