十四、百恋と学法

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十四、百恋と学法

「あ、あの、じゃ、はくさま」  羞恥でいろりが蛇珀を止めようとした時だった。 「あれーぇ? なんでこんなところに人間の女の子がいるの?」  深刻な空気には不相応な、気が抜けるほどの軽快な声が響いた。  振り向くと、果てが見えない緑の地平から二つの影が近づいて来た。  やがて見えたその一人は、薄紅色のやや癖のある髪を首の後ろで束ねており、紫水晶(むらさきすいしょう)に似た色の穏やかな瞳をしていた。背は蛇珀よりやや高く、中性的な美青年で、紅の狩衣を召していた。      それを見て蛇珀は、面倒な奴が来たとあからさまに嫌な顔をした。  しかしその神は目を輝かせながら一直線にいろりの方へ向かってくる。 「うっわー! 君すっごく可愛いね! 名前は? 歳は? 血液型は?」 「え、あ、あの」 「いろりに近づくんじゃねえ、年中花畑頭!」 蛇珀はいろりを守るように、二人の間に身体を滑り込ませた。 「ひっどいなあ、一応僕の方が年上なんですけど」 「神に年齢なんか関係ねえだろ!」 「百恋(ひゃくれん)、悪さするでない」  百恋と呼ばれた神は狐雲の声に動きを止めた。 「それは蛇珀のものぞ」  それを聞いた百恋はあっけに取られ、口を丸く開いたまま蛇珀を見た。  
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