金払え!

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金払え!

 金の斧と銀の斧、という童話をご存じだろうか。  木こりがある日、湖に斧を落としてしまう。悲嘆に暮れていると女神様が現れて、こんな問いかけをしてくるのだ。 『貴方が落としたのはこの金の斧ですか、それとも銀の斧ですか?』  正直者の木こりは、いいえ違います、と告げる。私が落としたのは鉄の斧です、と。  すると女神は男の素直さを称えて、鉄の斧を返すと同時に、金の斧と銀の斧もプレゼントしてくれるのだ。  つまり、正直に答えただけで、大儲けすることごできたというわけである。 ――やっと!やっと見つけたぞ女神の湖!  そして俺も、そんなボロ儲けを狙ってやってきた一人!この湖に斧を落として正直に答えれば、女神が金の斧と銀の斧をプレゼントしてくれるのだ。長らく時間がかかってしまったが、やっと噂の湖を見つけることができた。当然、試さないというテはない。  俺は持参した鉄の斧を――まとめて十個湖に投げ込んだ。 ――ふはははは!十個入れれば十個の金の斧と銀の斧が手には入るに違いなーい!倍返しどころか十倍返しだ、ふははなは!  湖の中心が光始める。俺は殊勝な木こりのフリをして、ひざまずいて女神の登場を待った。  そして、現れたのは――。 「男よ」  金ぴかの衣装を纏った美しい女神は――何故か、めっちゃくちゃこめかみに青筋を立てていた。 「私の湖に大量のゴミを投げ込んだのはお前か」 「……は?え?ゴ、ゴミって……?」 「お前じゃないのか?じゃああの斧は要らないんだな、燃やせないゴミの日にまとめて処分するか……」 「ま、待って待って待ってぇ!斧を落としたのは私です、私ですってば!返してください、私の斧ですよおおお!」  おかしい、何かがおかしい。  なんで女神は初登場の段階でキレているのか。  なんで質問が“貴方が落としたのはこの(以下略)”ではないのか!
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