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「ふぁ~あ、眠……」
なぜか屋上に向かった彼は、そこにあるベンチに座って伸びをした。
「静子さんも座ったら?」
そう言って自分の左隣をポンポンと叩く。
「業務中なんですけど」
「じゃあ、5分だけ。ダメ?」
私ははあ、と溜息をつくと、彼の隣に腰掛けた。すると、彼は唐突に私の肩にコテンと頭を預けてきた。
(嘘でしょ……)
急な接近に、ドキドキと音を立てる心臓。甘い匂いに、ふわふわ揺れる髪の毛。この感覚、どこかで……
「あーーーーー!」
「ちょっと、急に大きい声出さないでよ……」
二郎さんは目をこすりながらそう言ったけど、そんなことはどうでもよかった。
「嘘でしょ、夢じゃなかったの!?」
「おいら、寝たいんだけど……」
「寝てる場合じゃないですよ、仕事しないと!」
昨日のあれは、どうやら夢じゃなかった。と、いうことは、彼が隣にいるのはまずいんじゃないか。さすがに、座敷わらしの嫁になんて……。
「先戻ってますよ! ちゃんと戻ってきてくださいねっ!」
私は二郎さんをその場に残し、一人オフィスへ戻ったのだった。
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