2 夢じゃなかった

4/4
51人が本棚に入れています
本棚に追加
/125ページ
「ふぁ~あ、眠……」  なぜか屋上に向かった彼は、そこにあるベンチに座って伸びをした。 「静子さんも座ったら?」  そう言って自分の左隣をポンポンと叩く。 「業務中なんですけど」 「じゃあ、5分だけ。ダメ?」  私ははあ、と溜息をつくと、彼の隣に腰掛けた。すると、彼は唐突に私の肩にコテンと頭を預けてきた。 (嘘でしょ……)  急な接近に、ドキドキと音を立てる心臓。甘い匂いに、ふわふわ揺れる髪の毛。この感覚、どこかで…… 「あーーーーー!」 「ちょっと、急に大きい声出さないでよ……」  二郎さんは目をこすりながらそう言ったけど、そんなことはどうでもよかった。 「嘘でしょ、夢じゃなかったの!?」 「おいら、寝たいんだけど……」 「寝てる場合じゃないですよ、仕事しないと!」  昨日のあれは、どうやら夢じゃなかった。と、いうことは、彼が隣にいるのはまずいんじゃないか。さすがに、座敷わらしの嫁になんて……。 「先戻ってますよ! ちゃんと戻ってきてくださいねっ!」  私は二郎さんをその場に残し、一人オフィスへ戻ったのだった。
/125ページ

最初のコメントを投稿しよう!