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1 モテ期、到来?
「古杉神社……?」
大通りから少し外れた竹林の中に、ひっそりと古びた神社を見つけた。
お散歩するのが好きな私は、今日たまたま見つけたそこで、お参りをしていくことにした。
竹林の間から覗く、茶髪の影に私は気づかなかった。
「枯梨静子。明日で26歳、彼氏いない歴更新、か。へえ……」
石段を上がると、意外にも立派な境内が広がっていた。しかし、そこは名前の通り古びていた。こういう由緒ある神社の方が、案外ご利益があるのかもしれない。私は奮発して、5千円札を賽銭箱に放り込んだ。
カラカラと今にも落ちてきてしまいそうな鈴を鳴らし、二度深く頭を下げる。パンパンと勢いよく手を叩くと、そのまま合掌して目を瞑った。
(神様、私、枯梨静子と申します。年齢イコール彼氏いない歴を明日で更新してしまいます。なので、どうか、モテ期を、私にください!)
最後に深く深く頭を下げると、ふう、と息を吐いた。その時、背後が騒がしいことに気付いて、私は振り返った。
「……ん?」
「いや、お前がいいって言ったんだ」
「んー、いきなりはダメかも?」
「え、僕は賛成!」
タイプの違う三人の男性が、なぜか言い争いをしていた。
「……はぁ?」
一人は黒髪で長身の九州男児系イケメン、多分30そこそこ。
そして、金髪でつり目の猫系イケメン、多分同い年くらい。
それから、茶髪でチワワなワンコ系イケメン、多分大学生。
「あ、あの……」
何かあったのかと声をかけたその時だった。
「!」
男性陣の視線がすべてこちらに集中する。すると突然、九州男児系イケメンが私の方に歩み寄ってきて、右手を差し出した。
「一目惚れしました、俺と付き合ってください」
「え……?」
困惑する私の元に、ワンコ系イケメンも歩み寄ってきた。
「いち兄、抜け駆けズルいよ。僕も君のこと一目みてビビッときちゃった、付き合って☆」
まさか、猫系イケメンも……
「ん? じゃあおいらも……付き合って?」
なぜか私の目の前につき出された、三本の右手。確かにモテたいとはお願いしたけれど、怪しい。かなり、怪しい。
「ごめんなさいっ!」
私は訳も分からず、その場から走って逃げた。
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