ねえ、もう勘弁してっ

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名前を呼ばれて振り返ると、先ほどまで私が立っていた場所に、男が立っている。 同じ高校、同じクラス。そうそうクラス委員長だ。 「なんだ、武藤か」 ほっと息を吐いたのは、ポケットにある百円の存在が大きい。これがアウトレットの警備員かスタッフだったら、分かりやすくオロオロしただろう。 「なんだ武藤か。じゃねえよ。おまえ、今、金パクっただろ」 「え」 うわ見られてたかっと、心でちっ。 「……百円、拾った」 「ふん、まあ正直に言ったから、許してやろう」 上から目線が鼻につく。 「……はあ、見逃してもらえませんかねえ」 「拾ったやつ、見せてみろ」 武藤が近づいてきて、ずいっと顔を寄せてくる。なんなんだ、いったいなんなんだあと思うが、顔には出さない。 この武藤はいつも野球部やら役員会やらなんやらで教室に滞在する時間が極端に少ないやつで、私の中では「喋ったことない、いや喋る機会すらないクラスメイト」のカテゴリに入っている一人だ。 私はポケットから百円玉を出すと、手のひらに乗せて突き出した。 「ん」
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