ねえ、もう勘弁してっ

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武藤がそれをじっと見る。 しかも手をアゴに当てて、んーとか、ふうむとか、そんな鑑定人風な雰囲気を醸し出している。 私はそんな武藤が可笑しくて、ぶっと吹き出してしまった。 「なんだよ、笑うなよ」 「ってかナニ? ただの百円でしょ」 「ふうん、そう思いたきゃ思え」 「え、違うの? もしかして、コレ、ただの百円玉じゃない?」 「ははん。わかっちったか?」 「ももももしかして、魔法の百円玉じゃ……」 すぱんっ、と頭をはたかれた。 「ちょっ暴力反対‼︎ DVだからこれ‼︎」 しかも私っ、あんたにとっても初対面のようなもんなのに‼︎ 「北澤、おまえアホか」 すると突然、手のひらに乗せていた百円玉を、武藤に取り上げられた。 まさか、クラス委員長がこんな暴挙に出るとはっ。 「ちょっとそれ私が拾ったんだからね‼︎ 返してよ‼︎」 私は、武藤の握った手に食らいついた。 武藤が、私の勢いに押されて、うわあっと後ろに飛び退く。 「痛い痛い痛い、腕がもげるだろ‼︎」 「もげてやる、もげろっ‼︎」 私は武藤の硬く握り込んだ手の中に、グイグイと指を押し込んだ。 「わ、わかったわかった、返すってば」 「はあはあ」 「おまえ、スゲえな。金に対する執着が」 悪かったな。こちとら筋金入りの拝金主義だ‼︎ 武藤は観念し、私はそれをさっと奪い返してポケットに入れる。 すると武藤は真剣な目を向けて言った。 「なあ、それ平成のやつだろ」 「ああ? なんだって」
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