ねえ、もう勘弁してっ

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暑さが本格的にやってきて、汗でTシャツが薄っすらと濡れる夏日。 ツイているのか、ツイていないのかが、まるで分からない出来事があった。 特に買いたいものがあったわけではない。けれど、この暑さから、少しでも逃れたいという気持ちがあったのだろうと思う。 高台へと行けば少しは涼しくなるのではと、うちから徒歩10分のアウトレットへと行った。 店と店を渡り歩きながらぶらぶらと歩いていると、視界の中へと飛び込んできたものがある。 (なんか、落ちてる) 興味はさほど覚えなかったが、なんだかんだで近づいていくと、ああ、お金かと分かる。 百円だ。 私は何の迷いも躊躇もなしに、ひざを折ってそれを拾った。 周りを見渡す。人もまばらで閑散としている。 「……誰もいない、ね。インフォ行くのめんどくさいしなー……もらっとくか」 私は意を決して、ついにそれをポケットに入れた。幾分の罪悪感に見舞われる。 「……は、早く使っちゃお」 私は自販機が置いてあるフードコートへと足を向けた。30円足せば、キンキンに冷えた炭酸が買えるはず。暑さで喉はカラカラだ。 「北澤‼︎」 その時、声を掛けられて、驚。
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