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夜が明けた。
からだが徐々に軽くなってきた。ぼくという物体が静かにゆっくり太陽に吸収されていく。この空の中にきれいに溶けてなくなるまで、あともうちょっとだ。
少し前、神様が現れた。
祐樹くんの意識を戻したと教えてくれた。これから少しずつ身体も動かせるようになるって。よかった。祐樹くん、よかったね。よかった。
光の粒子がぼくのからだにまとわりつく。意識が薄れていく。目を開けているのが難しくなってきた。
遠くで微かに矢部さんの声がする。
ぼくを必死に呼んでいる。
ぼくは最後の力をふりしぼって目を開けた。空に溶け出したからだは途中で漂うにように浮いた。地上では、ドッグフードを抱えた矢部さんが必死にぼくを探している。
――矢部さん、また会おうね。きっとだよ。
ぼくは微笑んで、最後のお別れをした。
【おわり】
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