14人が本棚に入れています
本棚に追加
少し遠くまで、散歩をした。
どこから来たのかを思い出したくて、あっちにこっちに歩いてみた。でも見たことのない景色ばかりだった。
夕暮れが過ぎていた。
風が冷たく強くなった。
ふと藍の空を見上げると雨はすぐに降り出した。濡れない場所を探してからだを小さく、小さく丸めて目を閉じた。
静かな時間が過ぎていく。
しとん、しとん、と雨が降る。
ぼくは、少し眠った。
夢うつつの中で、ぼくを「連れて行こうか」と言ってくれた矢部さんの声が、耳元で何度も、何度も、揺れている。
最初のコメントを投稿しよう!