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■ 自宅のリビング 2
女 「ただいま。」
男 「んー。」
女 「ごめん、ちょっと、ピアノ弾くね。」
男 「あー。あ…あれは、いつもの?発売日でしょ、今日。」
女 「え?…ああ、あれ、ごめん、忘れちゃった。今度…明日、明日買って来るよ。」
男 「んだよもぉ。」
女 「申し訳ない!ちょっと急ぎで確認しなきゃ、でさ、ごめんね。」
男(M) 「明らかに不自然な様子で電子ピアノの前に座った彼女が、ヘッドフォンで、僕の不審を遮る。鍵盤を叩くカチカチという音だけが響く。カチカチ、カチカチカチ…。この音は苦手だ。声の届かない彼女も、こちらを見ない彼女も…。」
男、女のバックから目的の雑誌がハミでていることに気付く。
男 「なんだ、買ってんじゃん。これ、取るよ、バックの。」
女 「んー?…ちょっと、なにしているの!?」
男 「…なるほどね。」
女 「…」
男 「どういうつもり?」
女 「どういう…って。」
男 「俺、ここまで気使われなきゃなんない程かな?そこまで惨めな訳?」
女 「そんなこと…っ。…ごめん。」
男 「あやまるなよ。」
女 「ごめん」
男 「(ため息)…俺って、同期が特集されてる雑誌、隠される程、かわいそうなんだな。」
女 「…嫌かなって思って。ごめん。」
男 「あやまるなって言ってんだろ!!」
女 「…」
男 「ずっと、憐れんでたんだよな。」
女 「そんなことない!私はただ、傷つけたくなくて…。」
男 「俺は…俺はそんな弱い人間じゃない!」
女 「分かってるよ。」
男 「分かってない!」
女 「…。分かってないのはそっちでしょ。私はただ、ずっと…ずっと貴方の力になりたいだけ、それだけなのに。」
男 「ああ、そうか、最初っからか。俺あの頃、まわり見下して、誰ともつるんでなかったもんな。かわいそうに見えたのか。ずっとか?ずっと、かわいそうな人って。私が居なきゃこの人だめだからって。ハハ…面白かった?満足した…?」
女 「…ひどい…」
男 「自分に酔ってんじゃねーよ。お前なんか居なくたって、俺はっ…!」
女が男を平手で叩く。
女 「…ごめん。もう、無理だ。出てってくれないかな。…出てって。」
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