最期の先手番

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街の小さな将棋道場が満員の常連客で大変な賑わいを見せている。 その中心にいて大人どもをふてぶてしい態度で睥睨し見下すようにしているのはまだ小学生の男の子だった。 本日はこの子のために特別に隣りの県からアマチュアの高段者を招待し対局している。 「どうです、やっぱりダメですか?」 後から来た客が顔馴染みの友人に聞いた。 「あぁ、全然アカンわ」 人盛りの輪の後ろで二人は対局の邪魔にならぬよう気をつけて会話する。 「やっぱりなぁ、神山君はここでは向かうところ敵なしだが、アマチュア名人大会にも県代表で出たことのある舟木さんには勝てないか」 それでも遅れて来た客は楽しそうにしている。 「おい、勘違いするな。負けそうなのは舟木さんのほうだよ」
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