最期の先手番

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「………負けました」 ほぼ毎年、愛知県のアマ代表としてアマ名人戦やアマもプロ棋士と対戦出来る大きな大会に出場する強敵の舟木が将棋盤に手を置いた。 ギャラリーから大歓声が上がる。 まだ10歳の子供がそれほどの強い大人を負かしたのだから無理はない。 過去に何回もプロに勝利したことのある舟木が真っ赤な顔をしている。 こんなはずではない。 子供だからと油断したのだ。 舟木は自分にそう言い聞かせる。 「この辺では最強だと言われている舟木さんを負かしたぞ」 将棋道場の主も興奮している。 「神山君、よ、良かったらもう1番願えますか?」 いい大人の舟木がもう1局戦おうと所望する。 「いいよ」 神山少年がこともなげにそう言った。
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