最期の先手番

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「おっ、名勝負がもう1局見れるのか」 当然、ギャラリーは少年の応援に回る。 「もしこの勝負も神山君が勝ったらえらいことだな」 ギャラリーはもう誰も将棋を指していなく全員が神山少年と舟木を観戦している。 「馬鹿だなぁ。舟木さんの実力はこんなものではないさ。プロにも何回も勝っているんだよ。1局目は神山君に花を持たせて緩めてやったのだ」 観戦する人々は勝手に好きなことを言っている。緩めるとはわざと手を抜いたり、負けてやることだ。 「やっぱりね、舟木さんも本気を出すぞ。矢倉だ」 将棋の戦法の中では最も難解な戦い方を矢倉と言う。 王を金銀で頑丈に守るのだ。 「は、速い」 再びギャラリーがどよめく。 舟木はもう負けられないと慎重に指すのに神山少年は舟木が指すとすぐに指すのだ。 お互いの持ち時間は15分づつの早指しであるから1手に何分も考えるわけにはいかない。 舟木が駒を動かすと神山が瞬時に指すから舟木の持ち時間だけが減っていく。
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