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巴は部署の管理者として、エンドユーザーから出た要望等を纏めて上に伝える役目や、オペレーターが対応しきれないクレームの電話などを上司として代わって受ける役割も担っている。
詳しい経緯は不明だが、なにやら関連事業の海外出向から戻ってきた副社長の意向で、それまで外注で委託していたサポートセンターを自社で対応する事になり設備を地下に移したらしい。
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「おはようございまー……す」
いつもは置いていない顧客情報を扱うパソコン付近に、パーテーションが置いてあるのを見つけて、巴は今日も奴がきているのだなと察した。
黒い少し長めの前髪を軽く横に流し分けて、ワックスで固めている。枠が太めの眼鏡を掛けているものの、時折覗く切れ長の目と高い鼻梁、薄い唇で大変な美形であることが窺える。しかし、どことなく神経質そうで近寄りがたい雰囲気を出しているため、非常に話しかけづらい。
仕立てのいいスーツに身を包み、股下何センチなんだと言うくらい長い足を組んで、眉間に皺を寄せてパソコンで今日の受電状況を確認していた。男の身につけているスーツや時計等はどれも最高級品であり、型落ちなど気にせずに世代問わず人気の物ばかりだ。
彼が現社長の弟であり、この企業の副社長の堂馬和樹。巴は和樹の事が苦手なため、詳しい情報は不明だ。見た目から恐らく歳上だろうという事は窺える。
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