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「えー興味あります?これは『しばむら』の三枚千円セールで買った、お気に入りの一枚で……」
自分の戦利品について触れてもらえて嬉々として語ろうとしたのに、和樹は一切こっちを見ずにパソコンと向き合ったままだ。
「いやいや、副社長から聞いてきた割に、全然聞いてないじゃないですか」
和樹は眼鏡のブリッジを中指で押し上げ、無言でまだパソコンを見たままだ。
「……最近は何がセクハラになるかわからないので、副社長も言動には気を付けた方がいいと思いますよ。余計なお世話ですけど」
巴は腹立ち紛れに、少し脅しておく事にした。副社長相手にこんな気安く出来るのも、正社員よりかは上司相手に顔色を伺う必要のない立場ならではだと巴は思っている。
「ちゃんと聞いてはいたんだけど……気に障ったのなら、申し訳ないです」
巴が気を悪くした事を察知したのか、こちらを向きはしないものの、小さな声で謝罪をしてきた。
「いえ、まぁ別にいいんですけど……」
やれやれと呆れ、巴は自分のデスクへと向かった。
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