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「ん? なにこれ?」
私は制服にかかっていたチョークの粉を、パンパンと払いながらスマホを見て素っ頓狂な声を上げた。紺のブレザーは同じクラスメイトの柿田美華達にかけられたものだ。
明るい画面には、あるネットニュースが表示されている。
『【呪いの神社・鬼呪神社に行ってみた!】
最近SNSで話題の鬼呪神社。それは○◯県の××区に存在する。噂では一回につき一人だけ自分の願った人物を消すことができる、とのことだ。
やり方はそれほど難しくはない。毎日夜十時、参拝するだけ。二週間、消して欲しい人物の名を心の中で唱えながら十円入れる。人に見られなければ効果は一層高くなる。途中で消したい人物を変えてはならない。
我々取材班は鬼呪神社を参拝していた田中景子さん(仮名)を取材した。田中さんは上司からのパワハラで身体を壊してしまった。数年の療養を経て、外出を出来るようになった時鬼呪神社を知り、上司を“呪ってもらった”そうだ。すると、二週間後、上司の存在は“無かったこと”になったようだ。上司の事を同僚に聞いても、『そんな人いない』と一点張り。効果は絶大です、と田中さんは微笑んだ。』
「へぇ、いいな」
ポツリとそう洩らす。
私は学校で酷いいじめに遭っている。その主犯である柿田を消してしまいたい。
そうすれば、きっと、私の学校生活は平穏を取り戻せるのだから……
それに幸いなことに、この鬼呪神社、知らなかったけれど私の住んでいる区と同じだ。
早速、明日の放課後行ってみよう。
そう考えベットに入るといつもよりアッサリと眠れた。
* * *
訪れた放課後。私はギュッと十円玉を握りしめて、鬼呪神社を訪れた。
土地は小さく、木が生い茂っている。所々剥げた黒色の鳥居に、ボロボロの社務所。社務所にはあかりがともっておらず、人の気配が感じられない。参道を通ると、両脇に狛犬ではなく、鬼のようなものが置かれている。手水舎には落ち葉が浮かび淀んでいた。
十円と言うことは、“遠縁”を表しているのかもしれない、と思いながら賽銭箱の前に立つ。賽銭箱や鈴もボロボロだ。鈴なんて降ったら落ちてきそうだ。
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