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財布から錆びた十円玉を取り出して入れた。チャリンと微かに音が鳴る。そして、鈴をガラガラと鳴らしながら祈る。
──柿田美華が消えますように。神様、お願いします。
そう、祈って、ゆっくり顔を上げて神社を出た。
* *
二週間、私は放課後鬼呪神社に通い詰め、神様に祈り続けた。──柿田美華が、この世から消え失せますように、と。
私は最後の参拝を終え、帰路に着いていた。
明日、学校はどうなっているのだろうか。
どうやって柿田は死ぬのだろうか。
期待に似た感情を抱きながら、私は家のドアを開けた。
* *
翌朝。軽やかな気持ちで学校へと向かった。いつもは入るのが怖くて堪らない教室に全く恐怖心を抱かなかった。
「あ、おはよう」
声を掛けてきたクラスメイトに驚きつつ、「お、おはよう」と返した。つい、昨日までは柿田の指示のもと、誰も口をきいてくれなかったのに。ますます期待感が溢れる。
自席に着くと違和感を覚えた。
柿田の席は一番窓側の前から六つ目と言う角っこの席だ。だが、窓際の席は五つしかない。
咄嗟に机の数を計算すると、三十六個ではなく、三十五個だった。
すぐに立ち上がり、教卓に置かれている座席表を見る。
窓側の一列目から、進藤裕香、中谷光莉、江藤彩、奥宮由希石島ひなた。“柿田美華”と言う字は無かった。
最終確認をしよう。私は暇そうにしている油島さんに声を掛けた。
「ね、うちのクラスに柿田って人、いるっけ?」
「柿田? 誰それ? いないよ、そんな人」
予想通りの反応だった。私はこうして平和を手に入れたのだ。
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