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「ちょっと待っててください」と仕事場から早足で逃げてきたものの、キッチンに辿り着いた途端俺はヘナヘナと座り込んでしまった。 ドッドッドッドッドッドッ…… 心臓の音が煩い。 あれが北川秋?? まるで別人じゃないか。 寝ぼけてるから?? 落ち着け、とにかく朝ごはんだ。 震える手で冷蔵庫を開け、ヨーグルトと切っておいたフルーツを取り出して書斎へ運ぶ。 コンコン 「北川さん、入りますね?」 ドアを開けると北川秋は「あ、岩崎くんだぁ」とふにゃりと笑った。 可愛い。 仕事机とは別の、いつもコーヒーなんかを置いている小さなテーブルに、朝食を置く。 「北川さん、食べられます?」 「岩崎くんが食べさせてくれるんでしょ?」 あ、やっぱりそれ本気なのか。 北川秋があーんと口を開けて待っている。 そろそろとヨーグルトのスプーンを口へ運ぶと、パクリと口を閉じ、ゆったりと舐めとった。 「もっと」と言うので次々とスプーンを口へ運ぶ。 ヨーグルトをペロリと平らげると、フルーツも食べたいというので、フォークに刺してまた1つずつ口へ運ぶ。 りんご、キウイ、オレンジ… オレンジを食べた時、口から果汁が垂れた。 指で拭って、へへ、とはにかむ。 そして、ひとしきり食べ終わると北川秋は今度はスイッチが入ったように猛烈に書き始めた。 食器を片付け部屋から出て行く俺の姿なんか、もう見えていないみたいだ。 パタン、と扉を閉め、廊下にしゃがみ込む。 激しい動悸が収まらない。 なんだ、今の。
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