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ほとんど抱えるようにして、寝室まで連れて行き、ベッドに寝かせる。
黒縁の眼鏡を外した。何度見ても、ため息の出るような美しい顔だ。
首元まで留められたボタンが苦しそうで、ひとつ、ふたつ、みっつと外した。
露わになった胸元が悩ましいけれど、今はそれどころではない。
掛け布団をしっかりかけて、小さな声で「おやすみなさい」と言い、部屋を出ようとした、その時だった。
「行かないで。」
「北川さん?」
「ここにいて。」
「……っ、はい……。」
力なく伸ばしてきた手をそっと握りしめると、北川秋は安心した様に少し笑って、すぐに寝息が聞こえ始めた。
俺は感じた事無い心の騒めきと、同時にひどく安らかな気持ちになって、そのまま一緒に眠りに落ちた。
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