6

4/4
前へ
/87ページ
次へ
ほとんど抱えるようにして、寝室まで連れて行き、ベッドに寝かせる。 黒縁の眼鏡を外した。何度見ても、ため息の出るような美しい顔だ。 首元まで留められたボタンが苦しそうで、ひとつ、ふたつ、みっつと外した。 露わになった胸元が悩ましいけれど、今はそれどころではない。 掛け布団をしっかりかけて、小さな声で「おやすみなさい」と言い、部屋を出ようとした、その時だった。 「行かないで。」 「北川さん?」 「ここにいて。」 「……っ、はい……。」 力なく伸ばしてきた手をそっと握りしめると、北川秋は安心した様に少し笑って、すぐに寝息が聞こえ始めた。 俺は感じた事無い心の騒めきと、同時にひどく安らかな気持ちになって、そのまま一緒に眠りに落ちた。
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!

133人が本棚に入れています
本棚に追加