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数ヶ月に一度くらいのペースで、それは前触れ無くやってくる。
俺はその度せっせと仕事場に食事を運び入れる。
北川秋のおかげでレパートリーは増えたけれど、やはり比較的よく食べてくれるのは小さなおにぎりだった。
北川秋は、執筆している時にはほとんど意識が無いと言っていいくらいに集中している。
その状態から3、4日経つとスイッチが切れたようにパタリと倒れ込み、甘えたがりの小さな子供のようになった。
俺はそんな北川秋をとろとろに甘やかしてやりたくてたまらなくなる。
手を握って寝かしつけていたのが、せがまれ、一緒の布団に潜り込んでお互いに抱きしめあって眠るようになるまでに、そう時間はかからなかった。
そして俺は、以前にここで働いていたという顔も知らない人達のことを思う。
彼、彼女達も、こうして北川秋を抱きしめて眠っていたのだろうか。
いつか感じた胸の違和感はすでに確実なものになっていて、チリチリと焦げるようにひどく痛んだ。
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