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ところが数ヶ月が経ったある日、俺は北川秋の担当さんに呼び出されてしまった。 メールを開いた時、ゾワリとした。 北川秋には秘密で会いたいと言う。 待ち合わせのカフェに30分も早く着いてしまった俺は、さっきから水を何度もおかわりして、指先まですっかり冷えている。 「すみません、お待たせしてしまって。」 待ち合わせの時間の少し前に現れたのは、整った顔立ちの金髪の若者だ。 北川秋の家に打ち合わせなんかで来ていたときに何度か会ったことがある。 「いえ、俺が早く来すぎてしまったんです。」 だめだ、声が震える。 「改めまして、佐々木と申します。こんな風にちゃんとお話するのは初めてですよね。」 「はい。あの……すみません、俺っ、クビですか?」 「クビ?」 佐々木さんはキョトンとしている。 「いや、だってその、俺何かしたかなって思って……」 「あぁ、全然、違いますよ。」 佐々木さんは笑いながら言った。笑うと可愛いな、この人。 「クビになんかしません。それどころか岩崎さんには感謝してるんですよ。佐野くんに紹介してもらって本当に良かったと思ってるんです。」 佐野くん、というのはミズキのことだ。 「岩崎さんにサポートをお願いしてから北川先生は一度も体調を壊していません。岩崎さんのおかげです。ありがとうございます。」 深々と頭を下げられて、俺は恐縮してしまう。 「いえ、そんな、お礼を言われる様なことは何も無いんです。でも、それじゃぁ今日はどうして……」 「その件ですが……最近、北川先生に変わった事はありませんでしたか?」 「かわったこと?」 「はい……もともと北川先生の作品は優しい、あたたかみのある作品が多いんです。岩崎さんがサポートしてくださっているおかげで、ますます深みがでて素晴らしいものになっていたんですが…… ここ最近はずっと何かに怯えているというか、不安が付き纏うような表現が多くて。新しい作風なのかな、とも思うのですがちょっと気になってしまって。」 「不安、ですか?」 「岩崎さん、何か心当たりありませんか?」 「俺には…分からないです。」 「そうか。そうですよね、ごめんなさい、きっと僕の考えすぎですね。こんなことでお呼び立てしてしまって申し訳ありませんでした。」 「いえ、そんな、、謝らないで下さい。俺も気をつけて見てみます。」 「ありがとうございます。よろしくお願いします。」 「なにかあれば名刺の連絡先にいつでも連絡ください。」と言って佐々木さんは何度も頭を下げて帰っていった。
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