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「佐々木さん、ごめんなさい。っ俺、ずっと佐々木さんにも嫉妬してて」
「嫉妬?僕に?」
「俺が来る前は佐々木さんがシュウさんのことお世話してたって聞いてます。佐々木さん、シュウさんのことすげぇよく見てて、わかってるし、俺、2人の間には俺の入り込めない世界があるってわかってます。大事な、パートナーっつーか」
グスグスと泣き続ける俺を佐々木さんはきょとんと見ている。あぁ俺、凄い面倒臭いやつ。
「あのー…ちょっともしかしたら勘違いされてるかもしれないんですけど……僕が北川先生の担当になってから、岩崎さんにお願いする前に先生のお宅に伺ったのってほんの2.3回で、それも、玄関先までですよ?」
「え…?だってミズキが……」
「それから、北川先生をよく見てるっていうのは、担当になる前から僕、北川秋の作品のファンなんですよ。気持ち悪いくらい読み込んでるんです。」
「それならやっぱりシュウさんのこと……」
「いえ、それは無いです。それに僕…その、、恋人がいますし。」
恋人、という単語に顔を赤らめて照れる佐々木さんに嘘は無さそうだ。好きで好きでたまらないって顔してる。
「それじゃ俺、本当にひとりで勘違いして…ごめんなさい。」
「岩崎さん北川先生のこと、好きなんですね。」
「……はい。……!いえ、違います、好きじゃないです。好きじゃない。絶対。違います。だから、クビにしないでください」
佐々木さんの穏やかな口調に、思わず正直に「はい。」と答えてしまったけれど、駄目なんだ、バレたらシュウさんの側にいられなくなってしまう。
「俺、ぜんぜん好きじゃないです。だから、だから…」
シュウさん、俺シュウさんのことなんか好きじゃない。好きにならないから、側にいさせてよ。
ふと、泣きじゃくる俺を撫でてくれていた優しい手が背中から離れたのを感じた。
いよいよ呆れられたかと顔を上げると佐々木さんの姿は無く、代わりに僕を見つめていたのは……
「シュウさん…っ」
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