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「多田、似合ってる」
「え?」
「髪巻いたの、可愛い」
中学3年の秋日。石橋くんはそう言ってくれた。2年間彼に片思いをしていた私は、その一言に感極まりそうになる。
嬉しかった。美容院でこの髪型にして本当に良かったと、その日は浮かれて帰った。
けど、その日から一週間後の放課後。人のいない静かな教室に二人の友達といた石橋くんを廊下から見つけて、ふと立ち止まった時、石橋くんは友達にこう話していた。
「多田のやつ、髪型を褒めてやったらずっと浮かれてるの。何でお世辞だって気づかないかな。似合ってないのなんか自分で分かってるだろうに。ああいうのはもっと顔の可愛い子がするんだよ。あんな顔のやつじゃ無理だわ」
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