ただぶつかっただけなのに…

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ただぶつかっただけなのに…

「・・・・よっしゃ〜。東京に着いたぞ!」 羽田空港に到着して荷物を受け取り、安藤紘平はホテルへ向かおうと歩き出した。 紘平は最近大学を卒業したばかりである。東京に来たのは就職先の入社式に参加するためだが、それまではまだ数日時間があったため、観光ついでに少し早めに上京して来たのだ。 「・・・・えっとー、ホテルは・・・・」 ホテルまでの道のりを確認するため、携帯電話のマップ機能を使って調べる。 「おっ、ここから歩いて10分くらいか。あっちの方向だな」 そう言ってキャリーケースを引いて再び歩き出した時、前からやって来た長身の男性と肩が勢いよくぶつかった。 「・・・・ッッ!? 痛ぅ・・・・っ!!」 紘平はぶつかった反動でよろけてしまい、格好悪く尻もちをついてしまう。 「・・・・すみません。大丈夫ですか?」 男性は紘平の手をつかんで、そのまま立ち上がらせた。 「あっ、はい。こちらこそすみませんでしたっ! 僕もちゃんと前を見てなかったので・・・・っ!」 紘平は律儀に頭を下げて謝罪した。そして顔を上げた時、一瞬固まった。 目の前にいる長身の男性を見て、これぞまさしくイケメンの代名詞と言うやつか、と紘平は男ながらに思わず見惚れてしまった。 その男性はスタイルが良く、端正な顔立ちをしていた。何より特徴的だったのは、アッシュブラウンの瞳である。 日本人にしては非常に珍しい瞳の色だったため、半分外国人の血筋を引いているハーフかも知れない、と紘平は思った。 「・・・・とにかく、ケガがなくて良かった。それでは」 そう言って男性は軽く会釈して、紘平とは反対方向へと歩き出した。 紘平もそれにつられて、ぺこっと軽く頭を下げて男性を見送った後、視界の端に何か黒い物体が映り込んだ。 「・・・・ん? 何だこれ ・・・・あっ、もしかしてあの人の落としもの・・・・っ!?」 もしかすると、さっきぶつかった拍子にあの男性が落とした物かも知れない、と紘平はその黒い物体を手に取ろうとしたが、伸ばした手を思わず引っ込めた。 「こ、これってまさか・・・・」 その黒い物体をまじまじと見れば見るほど、テレビドラマなんかでよく見るある物にしか見えなかった。 「このエル字型のフォルムって・・・・ま、まさか・・・・拳・・・・銃ッ!?」
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