綿まみれの遺失物

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…遺失物届に書かれたナンバーはこの車で間違いなかった。 だだっ広い駐車場にポツンと置かれた一台の車。 車内の様子が見えないほどに詰め込まれたぬいぐるみ。 パトカーから降りた私は中を確かめるためドアに手をかける。 鍵のかかっていないドアはすんなりと開いた。 私はあふれ出すぬいぐるみをかき分けながら中の様子を探る。 毛深い中をひたすら突き進むとやがて視界が明るくなった。 パチパチと火の爆ぜる音。 4人の男女が川べりでバーベキューをしている様子が見える。 彼らと私のあいだには浅い川が流れていた。 その先には風に揺れる森…いや、違う。 ほつれ、綿をむき出しにしたぬいぐるみが森のように重なり私を見ている。 その時、若者達がこちらに来ないかと声を掛けた。 ぬいぐるみの森が大きくざわめいた…
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