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「お待たせー! さ、帰ろ!」
「うん」
たぶん、あの子は帰っただろう。こんな時間までいる人はいない。
そう楽観視していたのがいけなかった。
彼女は下駄箱がある玄関で待っていたのだ……。
冬の学校の玄関はヒヤリとしていた。
あのあと、わたしと離れたあと3時間くらい待っていたのだ。
わたしは彼女の元へと行こうとしたが、足が動かなかった。
ななみの機嫌が悪くなっていたから。
「……なんでいるのさ」
ななみの低い声が、わたしの耳に入る。
玄関には、わたしとななみ、彼女以外、誰もいなかった。
冷たい玄関、彼女は後ろ向きに下駄箱を履く、段差に座っている。
わたしたちには、気づいていない。
すると、ななみが「あいつにバレないように、帰ろ」と、最低な提案を投げてきた。
「……」
わたしの中で、悪魔と天使が戦い出す。
ーーーななみの言うことを聞いたらダメ。そんなのイジメと同じ
ーーー別にいいだろ? ななみの言うこと聞いたら? どうせ、バレはしない
わたしの中で葛藤が繰り広がる。だけど、臆病なわたしは……悪魔に負けた。
臆病だったわたしは、ななみの提案に賛同してしまった。
わたしもーーーいじめの加害者になってしまった瞬間だった。
そのあとは、記憶が曖昧だ。
結局、彼女にバレてしまい、外で口論となり、取っ組み合いのケンカになり、ななみはななみで“自分のせいじゃない”オーラを放ってて、わたしの感情に怒りが現れ、その怒りをぶつけるように彼女にーーー
「あんたのこと、嫌いだから」
最低最悪な言葉を言ってしまったのだ。
「な、なんでそんなことッ! 言うのさ! 友だちだと思っていたのに!!」
わたしだって同じだ。あなたとは、友だちでいたかった。だけど、自分の保身が大事だった。
「……」
「ヒドイ……ヒドイよ……」
彼女はその場で泣き崩れた。見るに耐えない、悲しい姿。
「おい! 何してるんだ?!」
玄関から先生が数人出てきた。
たぶん、わたしたちの喧嘩を誰かが先生に言ったのだろう。
わたしとななみ、彼女は先生と一緒に職員室の隣にある、応接室に入れられた。
わたしたちの前にそれぞれの担任の先生がいた。3人の先生に質問攻めされ、ななみは答えられずにいた。わたしは、先生の質問を答えていった。
しばらくすると、わたしたちの親が応接室に入って来た。
わたしは、この瞬間、事の重大さに身をもって知ることになる。
本当にわたしは、いじめの加害者になってしまったのだ。彼女も彼女の親にも迷惑をかけ、自分の親にも迷惑をかけてしまって、わたしの目に涙が出てきた。
すると、わたしの親に「泣くな!!」と、怒鳴られた。
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