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「泣く前に、この子に謝りなさい。泣くなら最初からやるんじゃない!」
親の怒鳴り声が応接室に響き渡る。その場にいた先生たちやななみたち親たちは、わたしの父親の怒声に面食らっていた。
わたしの担任が父親をなだめる。
「お父さん、落ち着いてください。娘さんも反省してますと思います」
「……」
何か言いたげな表情を浮かべていたが、父親は何も言わず口を閉ざした。
わたしは、彼女に彼女の親に向かって頭を下げた。
「すいませんでした……。ごめんなさいッ!」
わたしの謝る姿を見たななみも、わたしに続いて「…………ごめんなさい」と、小さな声で謝った。
謝っても、彼女の心は癒されないだろう。
彼女を裏切り、彼女の良心を捻じ曲げてしまった。
彼女は一生許さないだろう。今度こそ、許さないだろう。
「……」
彼女は何も言わなかった。わたしを見ずに、自分の親を見て「帰ろう」と、一言だけ言って、彼女のその言葉で今回の件は幕を閉じた。
翌日、わたしとななみは、彼女のいる教室へと向かった。彼女の教室に着き、中にいる適当な生徒に「あの子はいる?」と聞く。
「え? いや、今日はアイツ休みだよ」
彼女の不在を聞いて、わたしの心が痛む。
「そ、そっか」
「……」
「? なんか用事でもあったの?」
「いや、大したことじゃないから。ありがとう。また、来るね」
わたしとななみは、彼女の教室を後にした。
その翌日、わたしとななみは彼女の教室へ向かう。しかし、その日も彼女は休みだと昨日聞いた生徒に教えてもらった。
その翌日、昨日と同じように教室に行く。
「ごめん、今日も休みなんだ」
次の日、わたしとななみは彼女の教室へ行く。だが、その日も彼女は休みだと聞かされた。
それから、何日も何日も彼女の教室へ行くも、休みだと聞かされ続けた。
いつの日か、彼女の教室へ行くのは、わたしだけになっていた。ななみもなぜか、休みがちになっていたのだ。
あれから、1ヶ月後……。
わたしは、彼女の教室へ向かう。彼女の教室の生徒たちとも、いつのまにか良好な関係を築き上げていた。とくに、彼女の不在を教えてくれた、最初の生徒と。
「あの子はいる?」
「ううん。今日も休み」
「そっか……。わかったありがとう」
わたしは、彼女の教室から離れた。
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