1人が本棚に入れています
本棚に追加
ーーー彼女はとうとう、学校に来なくなった。
わたしの心は蝕まれる。たった1回の過ちがこうも、心を重たくさせるなんて。
ななみも学校に来ない。
2人の生徒が来なくなろうとも、この世界は回っている。
変わらない日々、変わらない日常が潤滑に回り、わたしの罪の意識も薄れていった。
いや、現実逃避がしたかったかもしれない。
彼女とななみとの関わりはなくなり、わたしは他の生徒たちと共に中学を卒業した。
その頃から、わたしの罪に対する意識は完全に消滅した。彼女という存在もわたしの中から消えていた。
あれから数年ーーーわたしは、今年で23を迎える。
中学時代の思い出はセピア色に薄れ、中学時代の友人たちとも関わりもなくなった。
彼女の記憶も忘れて……。
ーーーーー
ーーーー
「そんな……」
「どうした?」
ある日、彼氏(職場で知り合った)と買い物帰りの道の途中、わたしの前に、忘れていた彼女が道の先にいた。
何年も月日が経っていたけど、中学時代の面影を残す印象がある。
「……」
わたしは、歩いていた足を止めて、前方から来る彼女の姿に釘付けになっていた。
彼女はわたしに気づいていない。わたしの顔など覚えてはいないだろう。
彼女との距離が近づいて来る。
ーーーもしも、わたしのことを覚えていたら……? なんて話せばいい?
ーーー気さくになんて無理だ
ーーー馴れ馴れしくもダメだ
ーーー何も話さずに、他人のふりをするか……?
「……」
彼女がわたしの横を通って行った。
わたしは、また何もせずに終わらすのか?
「ーーー……ッ」
『待って』のひと言が出ない。
つくづく、情けない。あの頃と何も変わっていないじゃないか。
「…………」
「どうした? 大丈夫か?」
わたしは、この人との関係を壊したくない。と、さえ思っている。
馬鹿げた理由だ。
「……わ、わたし」
わたしの答えはーーー
「ううん。なんでもない、行こう」
「? そっか?」
わたしの心はあの頃と、変わっちゃいない。
弱い、弱い、心のままだ……。
最初のコメントを投稿しよう!