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贖罪
「“あんたのこと、キライだから”」
本当は、そんなこと思っていなかった……。
乾いた空の下で、わたしは“彼女”にひどい言葉を吐いた。目の前の彼女の瞳には、悲しみの色が滲む。悲しい表情を浮かべた、次の瞬間、彼女はわたしの頰を強くビンタする。
ーーーあぁ……。これで、“2度目”だ
「な、なんでッ……! なんで、そんなヒドイこと言うの?!」
声を荒げ、涙の粒が大量に流れ落ちていく。
また、彼女の心を傷つけたのだ。
わたしは、泣きながら睨みを付ける彼女の目をーーー逸らした。
彼女の怒涛の声が、言葉が、わたしの耳を攻撃してくる。
わたしは、彼女の心を傷つけた。
自分の保身のため、自分の友達のために、わたしはウソをついたのだ。
彼女の良心を傷つけた……。
愚かなわたしを赦してください……。
ーー3時間前ーー
中間テストが終わり、テストの答案が戻ってきた。勉強キライなわたしの5科目は、国語以外壊滅的だった。高校なら赤点候補で補習があるほどの情けない点数たち。
だけど、中学生のわたしには補習という、めんどくさいイベントはない。と、鼻を高くしていると、英語の授業でテストを返された時、『45点以下は追試』と言い渡された。
わたしは絶望した。
めんどくさいイベントが発生してしまったからだ。
英語の追試験は、今日の17時に行うことになり、わたしは昼休みと2分やすみを利用して、追試験のために再勉強を開始した。
追試験が開始する2時間前。追試験会場である英語室に向かう途中、中学でできた新しい友だちに会う。友だちもわたしと同じ、英語の追試験に向かうところだったという。
わたしと友だちは、英語室へと歩き出した。
「ねぇ! どこ行くの?」
背後から声をかけられ、わたしと友だちは振り向いた。声をかけてきたのは、小学校の頃の友だちだった、“彼女”がいた。
わたしは彼女に「追試で英語室行くの」と、教えた。
「そうなんだ。大変だね」
「そうなんだよ。やになっちゃうね」
わたしと彼女は、他愛のない会話を続けた。
平和な時間がこの時までは、続いていたんだ。何も変わらない、平凡な時間が……。
「ユーナー!」
わたしと彼女が会話をしている最中、わたしの背中に飛び乗ってきたのは、この学校で知り合った女子生徒ーーーななみだ。
「何やってんの? 早く英語室いこう」
ななみの明るい声が廊下に響く。ちなみに、ななみもわたしと同じく、英語の追試験だ。
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