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指先まで痺れているような、どろりとした沼に浸かっているような感覚に襲われる。長旅の疲れもあったのだろう。意識はあっという間に睡眠の世界に吸い込まれていった。
*
目覚めは日の出前。
アラームに頼らなくても起きられるのは習慣によるものだ。
仄暗い室内でのっそりと起き上がる。重たくうねった髪の毛を掻きむしる。
枕元に置いた黒縁眼鏡を手探りで捕まえてかけると、照明をつける前にスマートフォンを見た。
昨晩の晒しがどこまで拡散されたかを確認するのは、朝の日課だ。そこそこに拡散されていた。昨日のものはそこまで大きな犯罪ではなかったからしかたない。
ようやく明かりをつけて眩しさに目を細めた。顎に手をやると少し髭が伸びている。しかし、剃るほどのことではない。ゆっくりと起き上がると、持ってきた着替えに袖を通した。
*
外は少し肌寒く、薄手のジャケットだと身に堪える。
日の出の時間が近いようで、雲は分厚いながらも僅かに橙色の強い光が滲んでいた。
頭部の失われた死体が発見された三件目の殺人現場は、前の二件の起きた場所からは離れている。
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