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御蔵夫妻の後について歩いて行く。ふたりは平然と歩いているが、段々と息が切れてきた。途中でふたりが振り返っては質問をしてきたけれど、疲れもあって無言でいたら、そのうち何も言ってこなくなった。
「着いたわよ」
声に反応してゆっくりと顔を上げると、そこは小さな神社の入り口だった。
違和感を覚えたのは、青い鳥居と、その傍らには石柱の代わりに魚の石像があることだ。俺の視線に気づいて御蔵妻が言う。
「ここは人魚を祀っている神社なの」
『人魚』という言葉に心臓が縮み上がりそうになる。
今はどうしてもその言葉に過敏に反応してしまう。脳裏にあの半魚人が蘇ってきそうで、慌てて首を左右に振った。
すると御蔵妻の口から信じられない言葉が飛び出した。
「信じてもらえないだろうけれど、清瀬さんは、人魚に狙われているわ」
「おい、お前」
「ううん。正確に言うと、人魚の欠片を体内に有している者」
御蔵夫が制止してくるのは意外だった。しかしそれを振り切って、御蔵妻は続けた。
「わたしには分かるの。だから、お守りを渡したくて。ついてきてちょうだい」
冗談には聞こえなかった。
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