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冷や汗が止まらない。一礼してから鳥居をくぐる。石段をしっかり踏みしめて登ると30段ほどで拝殿の前に出た。
手水舎で手を洗い、口をすすぐ。そんな簡単な行程ですら、手が震えているのでまともに柄杓を扱えず苦戦する。それでもなんとか手水を終えた。
狛犬の代わりに魚のご神像が拝殿の左右正面にある。
御蔵夫妻と共に拝殿に参拝する。
無言で御蔵妻が拝殿の奥へと回った。立ち尽くしている俺に気づいて振り返ってきたので、慌ててついていく。
しかし、本殿に神職でもない人間が、まして余所者が足を踏み入れていいのか。
困惑が表情に表れていたのだろう。御蔵妻は、手招きをして俺を呼び寄せた。
御蔵妻はしゃがむと、本殿の床下から鍵を取り出した。本殿の鍵にしてはセキュリティが甘すぎるが、ここまで辿り着くのも一苦労なので罰当たりな輩はそんなにいないのだろう。
本殿の戸がゆっくりと引かれる。
絢爛さはなく、奥に黒い塊が祀られている。目を凝らしてみても薄暗くて判別ができない。しかし位置的に、恐らく御神体なのだろう。
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