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御蔵妻は本殿に入っていくと、手慣れた様子で脇にある戸棚のようなものから何かを取り出して、戻ってくると俺の掌の上に置いた。
それは親指の爪ほどの小ささで、金色のような銀色のような不思議な色に輝いていた。触ってみると薄い割に硬くて容易に割れそうにない。
「……鱗?」
「正解」
神妙そうな面持ちのまま、御蔵妻は頷いた。
「人魚の鱗。きっと、これが貴方を守ってくれるわ」
「どうしてこんなものがこんな神社の奥にあるんだ。訳の分からないことばかりだ。いい加減に、俺にも分かるように説明してくれないか」
自分からは、半魚人と出会ったとはとうてい口にすることができない。
しかし狙われているというのはそういうことではないのか?
守ってくれるとはどういう意味なのか。
「気づかなかった? 人魚だったものなの、あれは」
すると御蔵妻が本殿の奥を指差した。
黒い、塊。御神体だと予測したのは正解だったようだ。
二の句を継げないでいると、御蔵妻は人魚に視線を向けたまま語り出す。
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