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人魚の肉を食べて何百年も生きているだと? そんなことがあってたまるものか。とうてい信じることができない話だ。
普段の俺なら一笑に付していただろう。しかし、今は違う。
「……どうしてそんな話を俺にするんだ」
やっとの思いで言葉を振り絞る。
「さっきお伝えした通りよ。清瀬さんは人魚に狙われているから、予備知識として。勿論、信じるかどうかは自由だわ。それに、あなたは連続殺人事件を取材しに来たんでしょう? だとしたらこの町の予備知識くらいは必要かと思って」
掌の上でかすかな光を反射している鱗に視線を落とす。
事件現場の写真を撮っているところを見られたのだから当然のことだろう。
「わたしはあの事件のことを人魚の仕業だと考えているの。ただしくは、ここに祀られた人魚の半身。かつて聞いたことがあるの。人魚には、双の存在がいたと。……だから、それが、人魚を奪った復讐をしているのだと、思っている」
*
その後、断って無視までしたのに強引に御蔵夫妻の家に連れていかれ、昼食を食べさせられる羽目になってしまった。
「遠慮なく食えよ! その細い体じゃ倒れちまうだろ!」
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