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思わず口にしてしまうくらい、瑞々しくて甘かった。
「嬉しい。少し離れたところに畑があってね。お野菜は基本的に自家栽培なのよ」
しかしまともに食事をしたのはいつ以来だろうか。
当然のように自炊などしないからコンビニや牛丼屋で済ませてしまう俺にとっては、充分すぎる量だった。
「民宿の豪華な食事に飽きたらいつでも食べに来てね」
軒先で手を振られて御蔵家を後にしたのは、午後1時をまわった頃だった。
腹が重い。
満腹感からくる睡魔と闘いながら、そのまま俺は第三の現場へ戻った。
——早朝に見た半魚人ともう一度遭遇できるのではないかと考えたのだ。
人魚伝説と連続殺人事件が関連していると100%信じている訳ではない。ただ、御蔵妻の言葉にひっかかりを覚えたのだ。
『人魚に狙われている』
俺は第四の犠牲者となりえるだろうか?
次の犠牲者が失う部分はどこだろう、と思った。片足のどちらか。死因は失血死だ。恐らく、苦しみながら息絶えることだろう。
だけど死ねるならどんなに楽か、と感じてしまったのだ。
不覚にも温かな場所へ行ってしまった所為だ。御蔵夫妻の所為だ。
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