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既に布団も敷かれていたので、着替えるのも面倒だし、風呂に入る気力もないし、そのまま横になる。部屋の電気を消すと今日一日でたくさんのことがあったから疲れていたのだろう。緩やかに手足の先が痺れてくる。
不意に痺れに違和感を覚えた。
これは、なんだ?
いつの間にか金縛りのように全身が動かない。脂汗が滲む。
すっ、と障子が開いた。
「香がしっかりと効いているようですね」
暗闇の中で話しかけてきた声は、若女将のものだった。俺の脇に正座すると、滑らかな手の甲で頬を撫でてきた。
触れられたことで悪寒が走る。なんだ、これは。何が起きているんだ。
「久方ぶりの男性の、しかも、お若いお客さま。お代は要りません。わたくしがいただきたいのは、種でございます」
鈍感な俺にも理解ができた。
布がするりと床に落ちる音が聞こえて、上に覆い被さられる。不快感でいっぱいになるが、体が動かない。動かせない。助けてくれ。闇のなか、女の顔が近づいてくる、
——そのときだった。
稲妻が落ちたかのように白い閃光が弾けた。
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