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精神は死を求めているのに肉体は生を求めている。情けなさに涙が出そうになって、唇を噛んだ。誤魔化すように必死に粥を食べる。俺は泣いているのではなく、梅干しの酸味にやられているのだと顔をしかめてみせた。
御蔵妻はそんな俺のことをじっと眺めてから、両手で湯呑みを持ってお茶を飲んだ。視線をお茶に落とすと、少し躊躇してから俺をまっすぐ見つめてくる。
「お守り、役に立ってしまったみたいね。探し回っていたわよ」
背筋が粟立つ。御蔵妻の言いたいことは充分に理解できた。つまり、意図的に助けてくれたということなのか。
「こわかったでしょう。同胞として心からお詫びするわ……。かつて不老不死になったと信じていたわたしたちは、今や、不老不死ではなくゆっくりと老いていくことが分かった。だからこそ少しでも子孫を残そうと躍起になっている人間も一定の割合でいるの。あ、わたしは『あちら側』ではないから、安心してちょうだい。……信じてっていう方が難しいでしょうけど」
思わず首を横に振った。
胸ポケットから鱗を取り出す。これがなければ酷い目に遭っていたことは紛れもない事実だ。
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