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「この町の人間どもは数百年前に人魚を歓迎しておきながら惨殺し、血肉を体内に取り入れて不老不死になろうとしていたそうだぞ。そして現在もなお、人魚の肉を食おうとしている。どうだ。人間が憎いか。憎いだろう」
憎しみを煽るつもりで吐き捨てる。
半魚人は数回瞬きを繰り返した。絞り出されたのは、前と同じ金属を擦り合わせたような声。
『しあわせに、くらしているのでは、なかったのか。しあわせに、していると、おもったから、わたしも、にんげんを、たべて、にんげんに、なろうと、おもったのに』
——やはり連続殺人事件の犯人は半魚人だったというのか!
しかし、人間になろうと思った、だと?
憎しみの対象が、町の人間ではなくて人魚だというのは?
半魚人は我を失ったかのようにふらふらと歩き、大きな音を立てて海へ飛びこんだ。激しく水飛沫があがる。
「待てよ。これを見せたら俺を喰ってくれると約束したじゃないか! ……!」
大声を出してしまったことに自分自身で吃驚する。
魚の部分だけを水面に出して、半魚人は淡々と答えた。
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