52Hzのジオラマ

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 幾つかのまとめサイトが表示された。俺もかつてはここに炎上案件を載せていたものだ。睡魔と格闘しながら目で追っていく。探していた情報は多数の項目の下の方に埋もれていた。  ——数百年前。流星群極大の日、港に現れた人魚。  地主と恋に落ちたが子ができず、跡継ぎを狙う名家の謀略によって殺された。その血肉は地主と再婚した名家側によって祝い物として振る舞われた。  町の人間は不老不死となった。  しかしその子どもは不老不死ではなく、親より先に老いていく。予期せぬ悲劇。少しでも子孫を残そうと、外から人間を呼ぶために町おこしをしたのが昭和の人魚伝説ブームだった。  また、人魚には双子の姉がいた。  人魚は美しい顔立ちをした下半身が魚の生物だった。一方で双子の姉は上半身が魚だったと、当時から生きている人間により証言されている。  非常に醜い生き物であった、と。  御蔵妻から聞いた話と食い違う部分はあるものの、合点がいく。  つまりあの半魚人は人魚の双子の姉なのだ。  忌み嫌われ、疎まれた、人間になりたかった半魚人。
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