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暗闇に光る文字の羅列を追ううち、眠くてたまらなかったのに寝られなくなってしまった。
*
「おい! 朝だぞ! 起きろ! 働かざる者食うべからず。畑に行くぞ」
「……」
それでもいつの間にか眠っていたらしい。まだ夜も明けていないのに、御蔵夫のがなり声に否応にも目が醒めた。
筋肉痛で足の節々が痛い。
拒否も反論もできないくらい回らない頭で強制的に軽トラックに乗せられ、連れて行かれたのは小さな畑だった。
プチトマトがたわわに実っている。というか、野菜が実っているところを見るのはほぼ初めてだった。
「ほら、食いたい分だけ摘め」
俺にビニール袋を渡してくると、隣で御蔵夫はきゅうりやらピーマンを収穫しはじめた。
摘め、と言われてもどうすればいいのか。
恐る恐る手を伸ばすと怒号が飛んでくる。
「やり方も知らないのか! これだから東京育ちはいかん。ここをぽきっと優しく折ってやるんだ。いいか、丁寧にやるんだぞ。こんな風に。そうだ。やればできるじゃないか。食ってみてもいいぞ」
御蔵夫は服の裾でプチトマトを拭いて、口へ放り込んだ。
真似して食べてみる。
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