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連続殺人事件の犯人も半魚人というオカルト的結末だった。東京へ戻ってもくびにされるだけだろう。
どうして俺はのうのうと生き延びてしまっているのか。
飯を食って、眠る。それしかしていないし、できない。忌み嫌われ、疎まれている。そんなもの、姿形が違うだけで俺と半魚人のどこに違いがあるのだろうか。
半魚人がいつの間にか隣にいた。視認せずとも生臭いのですぐに分かる。視線を向けずに問いかけた。
「俺を喰らう気になったのか?」
『もう、やめた。にんげんは、たべない』
「お前、人魚の双子の姉なのか」
半魚人は答えなかった。
「憎しみは的外れだった、と言ったな。お前は、幸福になった人魚を憎んでいたのか」
俺だって、幸せを手にした者を憎む感情なら、誰よりも強く持っている。
「俺は俺以外の人類すべてを憎んで生きてきた。どうして俺ばかりが不幸な目に遭うんだと思い続けてきた。お前より俺の方が、烈しい憎しみを持っている。だけど、もう、どうでもいい」
俺は躊躇うことなく足から海へ飛びこんだ。
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