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「酷な話だ。お前から強制される謂われはない」
ゆっくりと半魚人が言葉を絞り出す。
『あのこばかりがあいされていた。わたしはいらないこどもだった。
ほめられるのも、もとめられるのも、あのこ。
あるひ、ちじょうへいくといいだした。
みんながはんたいした。だけどあのこはでていってしまった。
わたしはのこされて、ますますせめたてられるようになった。
あのこはきっとちじょうでもあいされるんだろうとおもうと、わたしは、わたしは』
徐々に金属音ではなく、人間の少女のような囁き声に聴こえるようになっていく。透明感のある滑らかな音。
金属音とは違っていつまでも聞いていられるような心地よい音だった。
その所為かは分からないが、他人なんて慮ったこともなかったのに、気づくと半魚人の気持ちを想像してしまって、その先の言葉が容易に理解できてしまって、何故だか息苦しくなってきて言葉を遮る。
「お前のことなんて知らない。それなら、お前のいないところで死んでやるだけだ」
半魚人は反論せず、海に飛びこんだ。
飛沫が顔に当たる。
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