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「絶えず伴侶に恵まれてきた貴女はいいでしょうね。わたしのようにすべての子が亡くなってしまっていないんですもの。えぇ、この辛さは貴女なんかには分からないでしょうね。わたしはこの血を絶やすわけにはいきませんの。奇祭までに必ず見つけ出して虜にさせますから。人魚の血肉も口にさせれば、永遠の繁栄も夢じゃありません……。今度こそ手に入れてみせる、永遠を」
粘度の高い毒だ。
言葉だけじゃなくて、その態度が、纏う空気が、毒であり棘だ。傷つける為に絡みついてくる
嫌悪感が蘇り、吐きそうになる。
絶対に見つかってはならないと決意を固くする。
去って行く足音に耳をそばだてて完全に気配が消えたのを確認すると、俺は御蔵家の扉をノックした。
先ほどの会話などなかったかのように御蔵妻は相変わらず気立てのよさを全面に滲ませている。しかし俺の衣服がずぶ濡れになってしまっていることには驚いて、口元に手を当てた。
「あら、海水に浸かってしまったの? そのままだとよくないから、水でも浴びたらどうかしら」
「すみません」
「謝らなくていいのよ。ほらほら、お風呂場へ行ってらっしゃいな」
俺は素直に従った。
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