7人が本棚に入れています
本棚に追加
洗濯してもらっている間には御蔵夫が若い頃に着ていたという深緑色の甚兵衛を借りた。ゆったりとしていて着心地がいい。
麦茶まで入れてしまってもらい、大人しく居間でちびちびと飲む。
俺ごときの所為であんな毒を振りまかれた御蔵妻に対して申し訳なかった。
「お? 懐かしいものを着ているな! 俺の方が男前だけどな!」
がははと豪快に笑いながら御蔵夫が帰ってくる。既に飲んでいるようで赤ら顔になっていた。
茹でたての枝豆をつまみに、御蔵夫は焼酎を開けた。
「たまには飲むか? 飲むだろう?」
空いたグラスに焼酎を注がれてしまう。嗅いだことのない強烈なアルコールの匂いがして眉を顰める。
大きな氷が涼しげな音を立てながら白熱灯を受けて瞬いている。
一気に飲み干すと喉の奥に火がついたように熱くなった。全身が、ゆっくりと弛緩していく。
「おい? だ、大丈夫か?」
大丈夫では、ない。
俺はグラスを卓袱台に置くと、座っていることもできなくなって畳の上に仰向けになった。畳の冷たさが丁度いい。とにかく体が熱いのだ。
世界が歪んでいく。動いていないのに回っている。
最初のコメントを投稿しよう!