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卓袱台に置かれた漆らしき茶櫃を開けて急須と湯呑みを取り出す。床の間の小さな金庫の横に置かれた花の絵が描かれた昔ながらのポットからお湯を急須に注いだ。蒸らしている間に茶櫃から小さな菓子も出す。筒状の煎餅のなかにクリームが詰まっているやつだ。
お茶を急須に注ぎ、菓子を咀嚼しながら、クリームのざらりとした舌触りと甘さに眉を顰める。熱々のお茶で流し込んだ。
今回のスクープは必ず成功させなければならない。
そして、世間に認めさせるのだ。俺が正義だと。
俺はずっと『正しいこと』だけをして生きてきた。些細な不正を見逃さず、塵のような悪事すら許さない。倫理に反することがあれば世間に知らしめて糾弾し断罪することは俺の使命だ。
翻れば、それがなければ俺に生きている価値などない。
安物のカメラを首から提げて、立ちあがる。
ようやくスマートフォンの電波受信状況も回復していた。場所を確認する。まずは現場へ向かわなければならない。
第一の殺人があった、町西側の波止場。
*
曇り空を完璧に写しとった灰色の海は、水平線を曖昧にさせている。
波は穏やかで時折砕ける音が聞こえる。
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